ポンプの種類を徹底解説!スペックを測るポイントも合わせて解説
ポンプは主に液体を移送するために使われる道具で、多くの分野で使われています。
世界中で古くから使われているため、たくさん種類があり混同しやすいかもしれません。
今回は、作業現場で使われるポンプの種類について詳しく解説していきます。
さらに、ポンプのスペックを測るために大切な流量と揚程という2つのポイントについてもご紹介しています。
ポンプの基本的な種類
ポンプとは、圧力を使って液体などを汲み上げ・移送するための流体機械の総称です。
● 上下水道
● 発電所
● 石油精製設備
● プラント
● 住居の給水
● 農業
● 工場
● 防災
● 食品、医薬品、化粧品などの製造
● 配管
などの用途でポンプは使われています。
日本でポンプが広く実用化されたのは明治に入ってからで、当時の東京帝国大学(現在の東京大学)教授だった井口在屋が1905年に「渦巻ポンプの研究」を発表。
その理論を実業家の畠山一清が事業化し、上下水道の整備をはじめ様々な産業に国産ポンプが使用されるようになりました。
ポンプは大きく分けて以下の3種類があります。
● 非容積式ポンプ
● 容積式ポンプ
● その他
非容積式ポンプ(ターボ式ポンプ)
非容積式ポンプとは、ポンプの内部(ケーシング)で羽根車を回転し、その遠心力で流体を送りだす仕組みのポンプです。
● 遠心ポンプ
● 斜流ポンプ
● 軸流ポンプ
などが非容積式ポンプに分類されます。
大量の液体を連続して送るのに適しているというメリットがあり、吸込・吐出揚程は低く、流量は負荷によって大きく左右されるという点もあります。
遠心ポンプ
画像引用元:3分でわかる技術の超キホン ポンプの基本原理と分類 | アイアール技術者教育研究所 |
ポンプ内部の羽根車が高速回転した時に生まれる遠心力を使って、液体を低所から高所に汲み上げます。
遠心力を使ってそのまま汲み上げると、速度エネルギーが過剰に大きくなって摩擦損失が大きくなってしまいます。ケーシングの中を通過していくにつれて減速させ、静圧に変えることで損失分を抑えて効率よく液体を汲み上げられます。
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遠心ポンプには渦巻ポンプと、ガイドペーンという回転しない固定羽根を使うタービンポンプなどがあります。
プロペラポンプ
画像引用元:プロペラポンプとは - コトバンク
スクリューや換気扇のような構造の羽根車の遠心力と、揚力作用を利用する仕組みのポンプです。
羽根車から出た液体の速度エネルギーを、軸方向に流すことで静圧エネルギーに変えています。
渦巻状のケーシングは不要なので、容積が小さくできるのが特長です。
プロペラポンプには、軸流ポンプと斜流ポンプがあります。
軸流ポンプは回転軸方向に液体が流れ、斜流ポンプは回転軸に対して斜め外側に液体がでます。
粘性ポンプ
画像引用元:ポンプの種類
粘性ポンプ(カスケードポンプ)は円筒または突起がついた円盤を高速回転し、液体を渦にすることで高圧状態で動かします。
家庭用の浅井戸ポンプなどにも使われています。
遠心ポンプは大きな流量を必要としますが、粘性ポンプは小さな流量で高圧力を生み出せます。
摩耗損失が少ないのが特長です。
容積式ポンプ
容積式ポンプは、容積内の液体を往復運動または回転運動によって加圧するタイプのポンプです。
容積式ポンプには、
● 往復ポンプ
● 回転ポンプ
の2種類があります。
往復ポンプ
往復ポンプ(ピストンポンプ)は、ピストンを前後運動して液体を吸い上げて吐き出し口から吐出させるしくみのポンプです。
画像引用元:容積式ポンプ(往復ポンプ・回転ポンプ)の原理と構造 | ポンプの基礎知識 | モーノポンプ
ハンドルがついた井戸や、灯油のポンプなども往復ポンプの一種です。
他にもプランジャーポンプといって、ロッド状のピストンの往復させることによりポンプ内の圧力を高めて液体を汲み上げるタイプのポンプがあります。
回転ポンプ
回転ポンプは、ギア(歯車)やスクリューを2つ噛み合わせた回転の力で液体を吐出するポンプです。
画像引用元:ポンプの種類と特徴|アピステコラム|冷却・防塵・放熱など熱対策ならアピステ
歯車を使ったものをギアポンプ、スクリュー(ねじ)を使ったものをスクリューポンプと呼びます。
粘性の高い液体に適しています。
その他特殊ポンプ
非容積式・容積式以外のポンプについても見ていきましょう。
気泡ポンプ
画像引用元:エアリフトとは – コトバンク
気泡ポンプ(エアリフト)とは、液体の中に入れた揚水間に圧縮した空気を送入して気泡を作るポンプです。
気泡の上昇と共に液体を汲み上げるという仕組みで、深海の鉱物を揚鉱する時や湖水の撹拌などに用いられます。
気泡ポンプの構造を応用したものとしては、石油の自噴採油やガスリフト採油などがあります。
水槌ポンプ
水槌ポンプは、水圧の力を利用するポンプです。
画像引用元:水撃ポンプのしくみ - 水撃ポンプが無電源地域を救う
入力管に液体が入ると重力によって速度が増し、排水弁が閉じてポンプ内の水圧が上がります。
これによりウォーターハンマー(水撃作用)を作り出し、揚水弁が開いて圧力タンク内に液体が入り込みポンプ内の空気が圧縮されて液体を揚水口から汲み上げるという仕組みです。
水中ポンプ
水中ポンプは、揚水管ではなくポンプ本体を水中に入れて揚水する電動のポンプです。
画像引用元:排水処理施設と水中ポンプの相性〜適正ポンプでトラブル回避〜 | 株式会社 東産業| 2021年12月14日
モーターによって液体を吸い上げて、コネクションを通して別の場所に汲み上げます。
● 建設
● 各種工事
● 農業
● 災害発生時
などに使われます。
水中ポンプの種類については、こちらで詳しく解説しております。
ぜひ合わせてご覧ください。
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ポンプの性能は流量・揚程で測る
ポンプの性能は、流量と揚程で測ります。
それぞれの役割についてご説明していきますね。
流量
流量とは、ポンプから吐き出す流体の量を指します。
● L/min:1分あたりのリットル量
● m³/min:1分あたりの立方メートル量
● m³/h:1時間あたりの立方メートル量
上記いずれかの単位で表されています。
揚程
揚程とは、「ポンプの汲み上げる力をメートル(またはmAq)で表したもの」です。
揚程には、
● 全揚程
● 実揚程
の2種類があります。
実際に水をどれくらい汲み上げられるか、吸込実揚程と吐出実揚程を足して示したものが実揚程と言います。
吸込実揚程:低い水槽等からポンプまでの汲み上げ能力
吐出実揚程:ポンプよりも高い位置の水槽までの汲み上げ能力
全揚程とは実揚程に損失分を含めた流体に与える全エネルギーをプラスした数値です。一般的に「揚程」とはこの全揚程を指すことが多いです。
流体が配管等を通る時などに、摩擦や流れからの剥離によって損失分が発生します。
この損失した分のことや抵抗分を「損失水頭」と呼び、実揚程+損失水頭=全揚程としてポンプの汲み上げ能力として表示されています。
画像引用元:揚程
なぜ損失分も揚程として含めるのかというと、損失分も流体にエネルギーを与えて移動することは間違いなく、またどれくらい損失するかは使用環境によって異なるためです。
まとめ
ポンプには様々種類があり、それぞれに仕組みや用途が異なることが分かりました。
水道整備からATMの作動まで、我々の生活の至るところでポンプは使われています。
流量・揚程はポンプの能力を表しますが、必ずしもスペックが高ければいいというわけでもありません。仕様環境に不相応なスペックのものだと、余計にコストがかかったり、操作しにくいなどのデメリットもあります。
お仕事の作業現場などでお使いの場合は、使用する流体にあった仕組みのポンプをお選びください。
この記事を書いた人
店長
店長。現場資材を取り扱う商社で確かな知識と実績を積みました。あなたの現場ライフをより快適にするショップを絶賛運用してます!
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現場市場店長のコメント
おなじみの水道から製造現場・農業など幅広い分野で使われるポンプ類。余談ですが冬に活躍するポリタンクから灯油をストーブの燃料用機に入れる灯油ポンプ、あれの日本工業規格における名称は「石油燃焼機器用注油ポンプ」というそうです。シンプルな見た目に反してごつい名前ですね♪